前日に決まった伊吹山——電車トラブルと山頂のカップ麺、そして一期一会

前日に決まった伊吹山——電車トラブルと山頂のカップ麺、そして一期一会
前日に決まった、伊吹山への旅




先日、長年一緒に山へ登っている仲間と、滋賀県の伊吹山(標高1377m)に行ってきました。
じつはこの山行、決まったのは前日のこと。いつも一緒に行くリーダーが、最近なかなか予定を共有してくれず、こちらから何度も催促した末に「じゃあ行こうか」となったのが出発の前日。しかも伊吹山の登山口へ向かうバスは、午前11時発の一本きり。帰りも15時発の一本しかありません。
事前予約の枠は前日の時点ですでに満杯。「当日、バスに乗れるだろうか」という不安を抱えたまま、私は当日の朝を迎えました。
梅田からの、思わぬアクシデント

まず、電車で大きくつまずきました。
梅田駅からJRで米原方面へ向かうつもりが、乗ったのは新快速ではなく通常の快速。高槻から各駅停車になっていたことに気づかず、これは相当な遅れになる——と車内でようやく悟りました。
そこで頭を巡らせ、京都駅に着いたところで新幹線に乗り換えることを決断。とても焦りました。
ところが今度は、いつも使っている新幹線予約アプリがパスワードの設定でどうしても開けません。仕方なく駅員さんに頼み、いったんSuicaでの乗車をキャンセルしてもらい、新しく切符を発行し直すことに。付き添ってもらいながらの切符購入は思いのほか複雑で、スマートフォンを脇に置いて操作する手順は、正直、私には難しく感じました。




本来なら新快速で行くはずが、乗れなかったからこその新幹線という発想。乗換アプリに出た時刻を電車の中で見ながら「これならいける」と判断し、動きながら次の一手を組み立てる。
乗り慣れた人には当たり前でも、私には新鮮な冒険でした。こういうことが実現できる時代なんだな、と少し感心もしました。

新幹線は速い。京都から米原まで、ノンストップでわずか15分ほど。この乗り換えが、この日を救うきっかけになりました。米原といえば、石田三成の居城があった土地。歴史を感じる駅です。
おかげで私は待ち合わせの友人たちより先に到着し、当日のバスチケットを無事に確保できました。実際に乗り込んでみると車内はほぼ満員。補助席も使わない状態でしたが、乗車率はかなり厳しめ。バスが一台しかないためでしょう。平日の水曜日にもかかわらず、ご年配のハイカーで大にぎわいでした。


薬膳アイスと、花いっぱいの登山道

登山口に着くとすぐ、ゲストハウスで薬膳アイスクリームをいただきました。いろんな薬草の入ったアイスで、小さなカップだったのであっという間に完食。そのまま山登りを開始しました。




伊吹山は、いつも登っている山よりずっと登りやすいハイキングコース。
軽い気持ちで足を運べます。ただ、道中に自生する花があまりに綺麗で、写真ばかり撮ってなかなか前に進みませんでした。




標高1300mを超えると、その高さでしか育たない花や植物が姿を見せてくれて、興味は尽きません。
近くで観光ガイドの方が解説をしていたので、横で無料で耳を傾け、ときどき勝手に質問までさせてもらいました。

山頂のカップ麺と、壮大な景色

頂上から見下ろす景色は、やはり壮大でした。もっとも、この日はもやがかかっていて、琵琶湖まで見渡すのは少し難しかったのが心残りです。
山頂には小屋があり、トイレも立派で安心。風が強くなることはありますが、ハイキング気分で十分に楽しめる山だと思います。

昼食どき、私は何も持ってきていなかったので小屋で食べ物を探すと、残っていたのはカップ麺だけ。他は売り切れでした。手に取ったのはスーパーカップ、400円。標高が高いせいか内圧が上がって、ちょっと膨らんだカップ麺になっていました。高い山のあるあるですね。お湯をもらって注ぎ、山頂ですする一杯——これが意外なほど旨い。本当に手軽に楽しめる山です。


とはいえ費用の話をすると、バス代は片道2000円・往復4000円。そこに大阪からの電車代を足すと、だいたい一万円ほどが目安になります。
スマホを探して——山で出会った人たち
私たちは同じ道を折り返さず、ぐるっと回ってバス停へ戻るルートを選びました。途中には山頂を示す三角点があり、そこでも一枚。そして下山へ。滞在時間は正味2時間ほどでした。


下山の途中、必死の形相で登ってくるお年寄りに出会いました。広島から来たというその男性は「スマートフォンがないんです」と、ひどく焦った様子。私たちのバスの時間が30分後に迫っていて、一緒に探してあげる余裕がなかったのが心苦しいところでした。
男性はそのまま三角点のあたりまで必死に歩き、記憶をたどってなんとか自分のスマホを発見。汗まみれになりながら、無事に下山してきました。駐車場の入り口では仲間らしき女性が三人待っていて、「お連れさんですか?」と尋ねると、そうだと。事故がなくて本当に良かった。




私は道中で出会った方に、自分が作っている「熊出没注意」のキーホルダーを無料で差し上げました。とても喜んでいただけて、こういう一期一会をこれからも大切にしたいと、あらためて思いました。



帰り道、そしてビール
しばらくしてバスに揺られ、みんなで同じ便に乗って無事に帰路へ。標高1300mのせいか、私の頭は少しズキンズキンとしていました。バスに揺られて少し酔い気味になりつつ、米原の駅から新快速で大阪駅まで。そこで仲間と解散し、私は地下鉄で自宅へ帰りました。
家に着いてからは、風呂に入ってビールを一杯。夕食のあと、少しだけ仕事も進めました。まだそんな体力が残っていたのか、と自分でも思いますが——一日の終わりでも、少しでも前に進めておきたい。そんな気持ちだったのです。
前日決定の、ドタバタ続きの伊吹山。それでも振り返れば、電車のアクシデントも、山頂のカップ麺も、人との出会いも、ぜんぶが良い思い出です。








