⏱️ この小説はおよそ6分で読めます。
廃墟に咲く、名も知らぬ花
石畳の隙間から、白い花が顔を出していた。
魔王城の大広間——かつて恐怖の玉座が置かれ、無数の魔物が跪いていたその場所に、今は風が吹き抜けるだけだった。天井の一部は崩れ落ち、そこから差し込む午後の光が、埃の粒子をゆっくりと舞わせている。
エレナは膝をついて、その小さな白い花を覗き込んだ。
「珍しいな」
彼女は呟いた。魔法使いにしては珍しく、植物の知識に乏しい自分でも、この花が本来この土地に咲くはずのないものだとわかった。魔王城の地下深くに眠る魔素は、およそ百年が経った今でも土を歪め、普通の草木を寄せ付




