連日の猛暑が続いていますが、我が家では一ヶ月ほど前にエアコンを買い替えました。本格的に暑くなりきる直前のタイミングでの決断でしたが、これが結果的に正解だったと感じています。
16年使ったお掃除ロボット付きエアコンの、知られざる裏側

これまで使っていたのは、16年ほど前に購入したパナソニックの自動お掃除機能付きエアコンです。ずっとリビングに設置していたのですが、リビングというのは調理の油煙が漂う場所でもあります。エアコン内部のフィンにその油分がじわじわと蓄積し、ワンシーズンに二回は洗浄しないと強烈な匂いを放つようになっていました。特に稼働し始めのシーズン最初は、鼻をつくようなにおいが部屋中に広がります。
対策として、私は自前で高圧洗浄機と業務用の洗剤を購入し、自分でエアコンを分解洗浄するようにしていました。ただ、この「お掃除ロボット付き」というのが厄介で、内部構造が複雑なぶん分解しづらく、洗浄のたびにひと苦労でした。フィルターの奥までブラシが届かず、結局カバーを外側から丸ごと外して洗浄機を当てるような力仕事になることもしばしばです。16年もよく頑張ってくれましたが、そろそろ潮時だと感じていました。
知名度と品質を優先し、ダイキンの14畳タイプへ

買い替え先に選んだのは、エアコンといえばまず名前が挙がる、業界最大手のダイキン。畳数は14畳タイプで、設置台込みで約15万円でした。業界的にはわずかに高めの価格帯ではありますが、そのぶん品質面での安心感に期待しての選択です。16年前のモデルと比べれば、省エネ性能や制御の精密さも当然進化しているはずで、そうした「数字には表れにくい安心感」を含めての判断でした。
内訳としては、エアコン設置作業者への家電リサイクル代・回収代が17,000円ほど、室内外を結ぶ配管パイプ代が3,000円ほどでした。作業自体は驚くほどスムーズで、設置に来てからわずか1時間少々で完了。設置場所が一階の部屋に一階の室外機という単純な組み合わせだったこともあり、工事はいたってシンプルだったと思います。
ただ一点だけ気になったのが、室外機の設置位置です。家の外に置いた室外機のすぐ前には壁があり、稼働時の熱がその壁に反射して戻ってくる格好になっていました。排熱効率の面では多少不利になりそうで気になりましたが、「まあこれで何とかやり過ごそう」というのが今のところの結論です。実際に稼働させてみると、旧機よりも静かで立ち上がりも早く、16年分の進化を素直に実感しています。真夏日でもすぐに部屋が冷え切ってくれるので、待っている時間のストレスがなくなったのは地味に大きな変化です。
新しいエアコン本体には、正直かなり満足しています。だからこそ、細部の作り込みには余計に目が向いてしまうものなのかもしれません。本体という「一番お金がかかっている部分」の品質と、リモコンホルダーのような「付属品として最後に足される部分」の品質には、どうしてもギャップが出やすいのだろうと感じました。
付属のリモコンホルダーが、木ネジ一本でぶら下がっているだけだった

さて、ここからが本題です。今回選んだのは比較的シンプルな価格帯のモデルで、付属品も必要最小限のものでした。リモコン自体はいつものダイキンのエアコンのリモコンで、形状も見慣れたものでしたが、それを壁に留めるためのホルダーが、木ネジ一本でリモコンを引っ掛けてぶら下げるだけという、正直かなり不細工な代物だったのです。壁に対して斜めに傾いてぶら下がる見た目も、なんとなく落ち着きません。以前の家では、似たような不満からリモコンを棚の上に置きっぱなしにしていて、結局どこに置いたか分からなくなる、ということもよくありました。
これはどうにかしたい。そう思った私は、いつも使っている3D CAD「Fusion 360」を早速立ち上げ、ホルダーのデザインに取りかかりました。リモコン本体の厚み・幅・ボタン部分の出っ張りをノギスで実測し、そこに数ミリの余裕を持たせた「受け皿」のような形状を設計。壁側には木ネジ二本を通すための穴を配置し、リモコンの下側からスライドで抜き差しできる構造にしました。使い慣れたソフトだけあって、設計はわずか30分で完了です。慣れたものだと自分でも思います。
Fusion 360で設計、Bambu Lab H2Dで出力
設計データができたら、あとは3Dプリンター「Bambu Lab H2D」で出力するだけです。印刷時間は約2時間でした。
1回目のプリントは、リモコンとホルダーのクリアランス(隙間)の見積もりが甘く、キツキツで出し入れしづらい仕上がりになってしまいました。3Dプリント特有の話ですが、CADデータ上の寸法と、実際に出力された造形物の寸法はどうしても微妙にズレます。素材の収縮や、プリンターのノズルが通った分だけ壁が外側に太る、といった要因が積み重なるためです。そこで内寸を数ミリ広げるよう再設計し、2回目のプリントで無事に狙い通りのフィット感に仕上がりました。こうした「一発では決まらない」試行錯誤も含めて、3Dプリンターでのモノづくりの面白さだと感じています。
完成したホルダーは、リモコンをスムーズに出し入れできるだけでなく、ホルダーに差したままでもリモコン操作ができる構造にしています。固定はシンプルに木ネジ二本。色もリモコン本体と同じ白で仕上げたので、よく見比べないと純正パーツと見分けがつかないくらいの完成度になったと自分では思っています。
もし欲しいという方がいらっしゃれば、このパーツをお譲りすることも可能です。ちょっとした不満から生まれた自作パーツですが、興味のある方はぜひお声がけください。3Dデータさえあれば、同じ型番のリモコンを使っている方なら誰でも同じものを出力できるはずです。
こういう「メーカーが作ってくれないなら自分で作ってしまう」という発想は、家電量販店で完成品を買うだけの生活からはなかなか出てきません。3Dプリンターという道具を手元に持っているだけで、日常のちょっとした不便に対する向き合い方がずいぶん変わるものだと、あらためて感じています。
熊本地震から考えたこと ― もしエアコンのない避難生活だったら
余談ですが、リモコンホルダーを自作しながら、ふと熊本地震のことを思い出しました。地震発生から一週間、エアコンのない避難生活を送っていた方々がいます。真夏や真冬にそうした環境で過ごすことの過酷さを考えると、電気の確保というのは本当に切実な問題だと感じます。ちょっとしたパーツの不満を3Dプリンターで解決できる日常のありがたみと、電気そのものが途絶えてしまう非常時の重みは、まったく別の次元の話です。
災害でライフラインが止まった直後にすぐさま電力を得る手段として、やはり期待したいのは自家発電、とくに太陽光発電です。中でも注目しているのが「ペロブスカイト太陽電池」。従来のシリコン型よりも薄く軽量・柔軟に作れるとされ、屋根だけでなく壁面やテントの布地のような場所にも展開できる可能性があります。実用化が進めば、避難先でも手軽に広げて使える電源として大きな力になってくれるはずです。早期の実用化と普及を、心から願っています。
おわりに
ちょっとした3Dプリンターの自作パーツの話から始まりましたが、モノづくりの延長線上に、こうした社会的な課題への関心もつながっているのだと、あらためて感じた出来事でした。設計図さえ手元にあれば、必要なものを必要な形で、自分の手で作り出せる。そういう小さな自由さを、これからも大事にしていきたいと思います。
もし皆さんの家にも「地味に不満だけど買い替えるまでもない」小さな不便があれば、それこそが3Dプリンターの出番かもしれません。何か作ってみたら、ぜひ教えてください。








